実録!BILL KEITHとの衝撃の再会!!

文章を書き終えてシャワーを浴びたり、何やカンヤとしているうちに時刻は
8時20分。BYRONとの朝食の約束はEVERY DAY8時45分ロビー集合である。
BILL KEITHも来ていることだから朝食の前に宮崎と少し話をしておこうと、
日本ではめったに食べないのに持ってきた『カリカリ梅』をかじりながら部屋を
出た。ここに住み着いてから毎朝、通路ですれ違う人に挨拶をする癖がついた。
それというのもこっちの人は、人の顔を見ると必ずといっていいほど
「good morning !」とか「HI !」と元気よく声をかけてくる。この日もシーツや
洗面用具の入ったワゴンを押したおばあさんが、にこやかに挨拶をしてくれた。
「good morning !」「good morning !」と答えながら梅をカリカリ。
気持ちよい朝である。118号のドアをノックしていると、通路に1人の
おじさんが(というより老人)たたずんでいる。梅干しを食べているとはいえ、
気さくなアメリカ人になっている僕はとてもさわやかに「good morning !」と
声をかけた。するとその老人が「good morning !」と言いながらこちらに
近づいてくるではないか。「ホテルの人かなぁ?なんか言われるのかなぁ?
困ったなあ。けったいなおじいやで、何かくれと言われたらどうしょう。」
「Mr. ken kitamura ?」「Yes.」『おや、このおじい僕の名前を知っとおる。
あぁ、良かったやっぱりこの人はホテルの人か。』と思ってニコニコしていると、
この老人は僕に握手を求めながらとんでもないことを言った。
「I'm BILL KEITH.」『ゴ〜ン〜!』

と頭の中で大きな音がした途端、食べかけの『カリカリ梅』はどこのポケットへ
入れたか分からず、あわてて指をなめズボンやシャツのそこいらじゅうで手を
拭き「I'm nice glad thank you.」みたいな訳の判らない英語を喋りながら
慌てふためいている僕。その1部始終を部屋から顔を出した宮崎に見られた。
一生の不覚である。

僕の知っているBILL KEITHとは全く違う、年寄りのBILL KEITH。彼に失礼を
詫びながらつらつら考えてみるに、あれからもうすでに相当の月日が流れている
のである。

BILLと初めて出会ったのは1975年のDAVID GRISMAN QUINTET来日の時。
コンサートを終えた彼らが、四条西木屋町にあったフォーク喫茶『琥珀』に
やってくるというので先回りをして待っていた。あまり遅かったのでBanjoを
弾きながら待っていると(その時僕はBILL KEITHのサンタクロースと言う曲を
弾いていた。)BILLが階段を上って来た。あわてて演奏をやめると、
やさしく「もっと続けて」と言ってくれ、弾き続けると「そこは、こないして
弾くねん。」と教えてくれました。その後に『sailor's horn pipe』も。
考えてみればBILL KEITHとの出会いはいつもショッキングな出会いであります。
とはいえ、それほど大恩あるBluegrassの大御所を自分で招いておきながら、
あろうことか『けったいなおじい』とは、なんちゅう失態。本当はBYRONの時の
ようにI'm glad・・・と丁寧に挨拶しようと思っていたのに、時すでに遅し
今さら言うても取って付けたみたいなので、良いプレーを期待しています程度に
とどめた。やっぱ初めての人や、久し振りの人に会うときは、最低限の情報は
入れておくべきです。なんせ僕が出発前に見てきたのは『mule skinner』の
レコードジャケットだったのですから、情報とは言えません。
『あぁ、あれから25年もたったのか。』   ー深謝ー

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